IDPA Japan Design Award

THE NOMU FUKUOKA

by KASASAGI STUDIO

Project Description

本計画は、100年以上続く瓦屋をクライアントとし、瓦素材の発する輻射熱を用いて利用者の深部体温を温め、心身の健康を後押しするための新たな低温浴施設を開業するプロジェクトである。同時に、急激に縮小した瓦の市場に対し、現代空間における新たな瓦の在り方や価値を模索する試みでもあった。
動線計画においては、温浴室へ直接導くのではなく、その手前に自然素材を多用した空間を通過するアプローチとすることで、都会の喧騒や無機質な環境から段階的に距離を取り、有機的で静かな状態へと感覚を移行させる構成としている。
床には瓦の素材を用いた面取タイルを四半敷きで採用し、造作什器には日本に古くから伝わる撓尺の屋根曲線からインスピレーションを得た机の造形を取り入れ、手仕事によって一枚ずつ丁寧に焼き上げた瓦を貼り込んでいる。四半敷きによって生まれる目地の連続とわずかなズレが、ひとつひとつ表情の異なる瓦の個体差と呼応し、空間に静かなリズムを与えている。ひとつひとつ繊細に、微妙に形状や表情の異なる瓦素材が独特のリズムを生み出し、美しい仕上がりとなった。また、瓦の小口をあえて見せることで、素材本来の力強さも垣間見える構成としている。
空間の主要な素材は瓦であるが、壁面には計画地よりほど近い九州で産出される神来土を用い、コンソールには石肌の錆と手仕事によって磨かれた内部の黒とのコントラストが美しい伊達冠石を採用し、造作什器の天板には素直でありながらもどこか無邪気さを感じるウォルナットを用いている。どの素材も、瓦の歴史的な重みに劣らない、素材本来の重みや強さを感じられるマテリアルを選定した。
また、これらの素材はすべて、時間の経過とともにその表情を深めていくものである。瓦が長い年月の中で風雨を受けながら風合いを増していくように、石の錆や、手仕事によって磨かれた面の艶、木の経年変化もまた、時間の蓄積を可視化する要素となる。とりわけ伊達冠石に見られる石肌の荒々しさと内部の黒のコントラストは、自然の時間と人の手の時間が重なり合った痕跡ともいえる。本プロジェクトにおけるマテリアルの選定は、単なる質感や色彩の調和にとどまらず、こうした時間の層を内包する素材同士を重ね合わせることで、空間そのものに時間軸を織り込むことを意図している。
本プロジェクトの空間デザインは瓦のみならず、石や木、土など、全てのデザインが素材の性質や手仕事から発想された造形であり、カタチのデザインから発想される現代的な空間デザインプロセスとは根本的に異なる。自然素材は本来、自然の一部であった人間の身体感覚に働きかけ、徐々にその状態へと立ち返らせる力を持つ。空間は、足元から伝わる素材の触感や温度、瓦の輻射熱によって身体が内側から温められていく感覚とともに、徐々に感覚が解きほぐされていく流れとして構成されている。その過程は、外界から意識を切り離し、自己の内側へと静かに向かっていく、禅的な体験とも重なる。
結果として、本プロジェクトはKŌGEIという日本に培われたフィロソフィーのもと、人と自然が共生するためのひとつの解ともなり得る実験的なプロジェクトとなった。

KASASAGI STUDIO


Guided by the philosophy of “delivering beauty in the right way,” KASASAGI is a design-build studio that applies traditional craftsmanship and natural materials to contemporary architecture.
We value the fundamental approach of architecture—creating spaces by specifying “people”, rather than relying on materials chosen for efficiency or uniformity. We seek to create architecture that will continue to be cherished by people by reconstructing the relationship between materials and people—a connection that was being lost amid industrialization—and by elevating the skills of artisans into new forms of value within modern society.
By carrying forward the philosophy of KŌGEI—a way of making that seeks harmony between humans and nature—KASASAGI aims to shape a richer future for architecture and society while connecting the value of handcrafted work to the future.

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