IDPA Japan Design Award

Shishido SPA

by 白浜誠建築設計事務所

Projet Description

縁あって3年ぶりに宍戸ヒルズカントリークラブを訪れた。
ゴルフはやらないが、この美しい環境と起伏のあるコースには毎度目を奪われる。
竣工後40年以上経過しているクラブハウスは、コース同様に管理が行き届いており、設備や内装に折々で手がかけられていることがよくわかる。男子浴室は竣工当時の状態で運用されており、改修サイクルの最後尾であったが、2022年6月の日本ゴルフツアー選手権に合わせて改修することとなった。
これまでの浴室天井はシルバーの金属サイディング、壁は二丁掛の白タイル、とてもメタリックで硬質な印象だった。温浴施設は世界共通で癒しの場であるが、湯船に浸かるということは日本人にとって馴染み深く、とりわけ「檜風呂」のような響きは特別だ。「汗を流す」だけでなく体中の感覚に優しく訴えるような「檜風呂」ができれば、ホールアウトしたプレイヤーに特別な癒しが生まれると考えた。
しかしながら高級旅館のように立派な檜風呂は、日々のメンテナンスや交換のサイクルを考慮すると、ゴルフ場に大きな負担がかかる。そのため浴室と脱衣室の天井全体を檜の格子で包み込み、湯気のかかる浴室天井部分にはセラミック塗装を施すこととなった。脱衣室と浴室は隣り合う部屋というだけでなく、明確な軸と視覚的な連続性によって一続きの空間とした。山型の格子を連続させ、横断する梁をミラーで隠すことにより、脱衣室と浴室の物理的な境界を消すことができた。改修範囲を天井に集約することにより、床や洗い場を極力既存の状態で残し、3か月以下の工期で完成することができた。
全ての養生を外した後、クラブハウス全体には檜の香りが漂いはじめ、檜風呂に浸かったようにゴルフ場関係者の表情がほぐれたのを見て、私も風呂に入りたくなった。

白浜誠建築設計事務所

1974年東京生まれ
2000年早稲田大学修士課程修了
2000年隈研吾建築都市設計事務所入所
2012年白浜誠建築都市設計事務所設立

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